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■研究ってどんなもの？
研究を語る
- 他の分子を認識する不思議な物質が生命の謎を解き明かすかもしれません
- 生体分子機能研究室 高橋圭子教授（薬学博士）
薬剤師の資格を持つ。日本薬学会、シクロデキストリン学会、その他化学関連学会に属し活躍中。シクロデキストリン学会第１回奨励賞受賞。
消臭剤やパウダーコロンで環状オリゴ糖という言葉を聞いたことはありませんか。化学名は、シクロデキストリン（CD）です。CDには、香りを長続きさせる作用のほか、保湿性の向上、タバコなどの臭いを消す脱臭等の機能を持たせることができ、化粧品分野、食品分野、衣料品分野など、さまざまな分野での応用が進められています。また、医薬品分野では、薬品の安定化や効き目の時間調節のために利用され、少ない薬量を有効に使うドラッグデリバリーシステム（DDS）の開発にも役立っています。
CDは、底のないバケツのような風変わりな形をした分子です。CDには、バケツの穴にすっぽり入る大きさの分子を取り込む性質があり、その性質が上の例をはじめとした様々な分野で利用されているのです。穴の大きさにあった分子をﾒ見分けるﾓというCDの性質は、味覚や嗅覚、免疫反応といった生体反応における分子認識の仕組みと非常に似通っており、その研究は生命の謎にせまる研究でもあります。役に立つ研究と夢のある研究に、わくわくする毎日です。 - 生命体類似組織や人工筋肉を研究、先端材料から生体材料の神秘まで
- バイオミメチック材料研究室 平岡一幸教授（工学博士）
日本物理学会、応用物理学会、米国物理学会、日本化学会、日本液晶学会、国際液晶学会に所属。
バイオミメチック（biomimetic:生体機能を模倣した）材料とは、生命体の優れた機能に学んで人工的に設計・構築した材料、例えば、人工筋肉や人工臓器を作る素材を意味します。最近では、生命体を構成する物質として、両親媒性物質、高分子、液晶などの柔らかい秩序構造を持つ分子や分子集合体（ソフトトマテリアルと呼びます）が注目されています。さらに、生命体組織にはソフトマテリアルからなるメゾフェーズ（中間相）が多く存在し、生命の神秘と深い関わりがあることが指摘されています。我々の研究室は、生命体組織を手本とし、ソフトマテリアルの階層的な秩序構造を利用することで、未来を拓く新しいバイオミメチック材料の開発を目指しています。例えば、棒状分子と鎖状分子との混合物からミエリン鞘類似体（ミエリン鞘は神経細胞を守るものです）を作りだしたり、液晶とゴムを化学的に組み合わせた液晶エラストマーを用いて人工筋肉の開発を行っています。ソフトマテリアルと生命体を俯瞰することで、生命体の持つ高度で神秘的な機能を解明し、それを人類に役立てることを夢見て日夜研究しています。 - 有機電子材料と光技術で、人間にも環境にも優しい活力ある持続型の社会を！
- 環境電子材料研究室 山田 勝実 教授 （博士（工学））
導電性高分子材料や記録・表示に関わる化学を研究、米国電気化学会、電気化学会（日本）、日本化学会、高分子学会、応用物理学会、日本写真学会（学会誌編集委員）等に所属。日本写真学会進歩賞受賞。
21世紀の科学技術の進歩はめざましく、私たちの生活は本当に豊かになった。もっと便利な生活を送りたいが、これ以上地球に負担をかけることは避けたい。これからの私たちの研究活動には、「地球環境の保護と改善」という課題が重要となり、化学を志す一人一人がどのようにこの課題に貢献できるのかを真剣に考える必要がある。
今取り組んでいる研究テーマの一つに、「電子ペーパー」という新しい電子ディスプレイがある。このディスプレイをたとえるなら「動画が見える新聞紙」といったところか。この新しい新聞紙は、常に最新の情報を見ることができるので、読み終わっても捨てなくてすむ。だから、従来の新聞よりも紙を節約できる。我々の取り組む反射型エレクトロクロミック方式で表示を行えば、読んでいる時間の電力の消費はゼロで、CO2の削減にも貢献できる。さらに、このディスプレイの一番の特徴は、従来のどの電子ディスプレイよりも目に優しいことである。この他の研究テーマとして、色素増感太陽電池、人工光合成によるCO2の固定化を進めている。人間にも環境にも優しいこれらの科学技術は、その重要性がさらに高まってくるであろう。私たちが日頃から取り組む研究が、地球環境に直接貢献できるのであれば、こんなに意義のあることはない。できるだけ多くの若者とこの喜びを共有していきたいと考えている。
